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つきもの
憑きもの
豊島 与志雄
「改造文芸」1949(昭和24)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,983 字 · 27 页
而も、私の方をじっと眺めている。その眺め方に、何の好奇心もなく、ただ執拗さだけがある。だから、それはもはや視線とも言えない。つまり、私の上にぴたりと据えられてる眼眸だ。
その眼眸の現出を、私はアルコールの作用に帰したり、ヒロポンの作用に帰したり、アドルムの作用に帰したりした。そして酒との別居を真剣に考えるようにもなった。
だが、驚くべきことには、その眼眸がいつしか、秋子の眼眸と重なり合ってきた。そう言うのも真実ではないようだ。両者が、初めは別々のものだったのか、初めから一つのものだったのか、もう私には分らないのである。両方持ち寄ると少しのずれもなく重なり合うし、実際には別々な場所に存在する。私にとっては、一方を幻覚だとするならば他方も幻覚だし、一方を現実だとするならば他方も現実だし、而もなお、一方は他方の反映でもあり得る。
憑かれたのだ。私の方が負けである。
そもそもの出だしがいけなかった。杉幸の二階をかりて座談会を催した、その時からのことだ。
民間宗教と言うか、異端宗教と言うか、さまざまな信仰が発生し、神がかりの教祖のまわりに信者が集まりつつあった頃で、私の雑誌では、心霊科学研究の大家と文学者と博識者との三人を招いて、なるべく通俗的な面白い鼎談会を催した。