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けんせいのほんぎをといてそのゆうしゅうのびをなすのみちをろんず

憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず

吉野 作造

「中央公論」中央公論社、1916(大正5)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,839 字 · 169 页

青空文庫

かくの如く、人民投票は代議政治の欠点を補うとは言うけれども、実際の効用は極めて少ない。のみならずこれを頻繁に行う時は、代議制の根柢を動揺し、その円満なる発達を妨ぐるの恐れがある。故に代議政治が比較的よく運用されて居る国においては、この問題は従来余り唱えられなかった。しかるに不思議にもこの問題は近年に至り代議政治の本場とも言うべき英吉利において頗る盛んに唱えらるる事になった。これによって人あるいは英国においてすらかくの如し。代議政治はいよいよ世界の信用を失い今や正に衰亡に近づけりというものがある。しかしながら暫く皮相の観察を止め、英国においてこの議論がいかにして、また何故に唱えられたかを、少しく詳かに考察して見るならば、吾人は容易に右の論者の説の必ずしも正当に非ざることを了解するであろう。なぜなれば、英国において近年レフェレンダムの説は、統一党が自由党の挑戦に応じ、その強襲的圧迫を押し除けんがために唱えられたのであるからである。英国では、人も知る如く、下院においては選挙の模様によってあるいは統一党多数なることありあるいは自由党多数なることあり、彼此相交代するけれども、独り上院は統一党が五分の四以上を占めて恒に変ることがない。