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けんせいのほんぎをといてそのゆうしゅうのびをなすのみちをろんず
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
吉野 作造
「中央公論」中央公論社、1916(大正5)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,839 字 · 169 页
ずっと昔の時代にあっては、少数の強者の生存繁栄が確かに政治の目的であった。この時代においては一般人民はこの目的を助くるための道具に過ぎず、いわば牛馬の如き役目を勤むるものに外ならなかった。我が国の歴史を見ても、古代には皇室とその周囲にある少数の貴族が政権の運用を決定する中心的勢力であり、彼らの利害休戚が即ち全体としての政治の目的と目指すところのものであった。一般民衆の利害休戚の如きは、少なくとも意識的には当時の政治家の顧みるところではなかった。最もよく平民的政治の行われたと称せらるる古代希臘の都市的国家においてすら、市部以外に在住する民衆は、奴隷として市民のために牛馬の用をなしたに過ぎなかったと言うではないか。されば古代においては政治の目的は少数強者の生存繁栄またはその権力の保持に存し、決して人民一般の利福ではなかった。降って中世以後の封建時代に至れば、人民一般の利害休戚はよほど尊重せらるるようにはなった。けれどもこの時代といえども、人民の利福が政治上の根本終局の目的となったのではない。何となれば、この時代における政治の中心的勢力は、封建諸王侯並びにその周囲にある武士の階級である。