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けんせいのほんぎをといてそのゆうしゅうのびをなすのみちをろんず
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
吉野 作造
「中央公論」中央公論社、1916(大正5)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,839 字 · 169 页
封建時代にあっては、謂わば平素小恩を售って、いざという場合には、その全人格を挙げて奴隷的奉仕をせよと迫るのであるが、平常いかに面倒を見てやったとて、万一の場合には月給を渡さなくてもよい、着て居る物も脱げということを今日規則として定めていたとしたら、使わるる者はこれ程不都合な規則はないと思うであろう。主人が不時の窮迫に陥った時、下女がこれを助くると否とはこれを徳義問題として、全然両者の自由意思に任したい。制度として強制するのは、却って両者の円満なる関係を水臭くする所以ではあるまいか。いわんや君臣の実質的関係の如きは、もと永き歴史の所産であり、法律的制度を以ては一点一画の微も新たにこれを増減することは出来ないものである。何となればこれは多年の歴史に薫陶されたる国民の精神に根柢を有して居るからである。陛下の御為には水火もこれを厭わずというのは、日本国民の覚悟である。しかしながらこの覚悟あるが故に、国家は時に人民の利福を無視しても可なり、人民はこれに甘んぜざるべからずと制度の上に定めたならば、これ却って忠良なる国民の精神に一種不快の念を抱かしむる基となるものではあるまいか。