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あるおんな
或る女
有島 武郎
2(後編)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,655 字 · 406 页
葉子は一々精読するのがめんどうなので行から行に飛び越えながら読んで行った。そして日付けの所まで来ても格別な情緒を誘われはしなかった。しかし葉子はこの以前倉地の見ている前でしたようにずたずたに引き裂いて捨ててしまう事はしなかった。しなかったどころではない、その中には葉子を考えさせるものが含まれていた。木村は遠からずハミルトンとかいう日本の名誉領事をしている人の手から、日本を去る前に思いきってして行った放資の回収をしてもらえるのだ。不即不離の関係を破らずに別れた自分のやりかたはやはり図にあたっていたと思った。「宿屋きめずに草鞋を脱」ぐばかをしない必要はもうない、倉地の愛は確かに自分の手に握り得たから。しかし口にこそ出しはしないが、倉地は金の上ではかなりに苦しんでいるに違いない。倉地の事業というのは日本じゅうの開港場にいる水先案内業者の組合を作って、その実権を自分の手に握ろうとするのらしかったが、それが仕上がるのは短い日月にはできる事ではなさそうだった。ことに時節が時節がら正月にかかっているから、そういうものの設立にはいちばん不便な時らしくも思われた。