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あるおんな
或る女
有島 武郎
2(後編)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,655 字 · 406 页
「いい所でしょう。おいでには少しお寒かったかもしれないけれども、きょうはほんとにいいおりからでしたわ。隣に見えるのが有名な苔香園、あすこの森の中が紅葉館、この杉の森がわたし大好きですの。きょうは雪が積もってなおさらきれいですわ」
葉子は岡を二階に案内して、そこのガラス戸越しにあちこちの雪景色を誇りがに指呼して見せた。岡は言葉少なながら、ちかちかとまぶしい印象を目に残して、降り下り降りあおる雪の向こうに隠見する山内の木立ちの姿を嘆賞した。
「それにしてもどうしてあなたはここを……倉地から手紙でも行きましたか」
岡は神秘的にほほえんで葉子を顧みながら「いゝえ」といった。
「そりゃおかしい事……それではどうして」
縁側から座敷へ戻りながらおもむろに、
「お知らせがないもので上がってはきっといけないとは思いましたけれども、こんな雪の日ならお客もなかろうからひょっとかすると会ってくださるかとも思って……」
そういういい出しで岡が語るところによれば、岡の従妹に当たる人が幽蘭女学校に通学していて、正月の学期から早月という姉妹の美しい生徒が来て、それは芝山内の裏坂に美人屋敷といって界隈で有名な家の三人姉妹の中の二人であるという事や、一番の姉に当たる人が「報正新報」