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あるおんな
或る女
有島 武郎
2(後編)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,655 字 · 406 页
とか「清盛論」というような大胆奔放な言説をもって思想の維新を叫んでいた。風俗問題とか女子の服装問題とかいう議論が守旧派の人々の間にはかまびすしく持ち出されている間に、その反対の傾向は、殻を破った芥子の種のように四方八方に飛び散った。こうして何か今までの日本にはなかったようなものの出現を待ち設け見守っていた若い人々の目には、葉子の姿は一つの天啓のように映ったに違いない。女優らしい女優を持たず、カフェーらしいカフェーを持たない当時の路上に葉子の姿はまぶしいものの一つだ。葉子を見た人は男女を問わず目をそばだてた。
ある朝葉子は装いを凝らして倉地の下宿に出かけた。倉地は寝ごみを襲われて目をさました。座敷のすみには夜をふかして楽しんだらしい酒肴の残りが敗えたようにかためて置いてあった。例のシナ鞄だけはちゃんと錠がおりて床の間のすみに片づけられていた。葉子はいつものとおり知らんふりをしながら、そこらに散らばっている手紙の差し出し人の名前に鋭い観察を与えるのだった。倉地は宿酔を不快がって頭をたたきながら寝床から半身を起こすと、
「なんでけさはまたそんなにしゃれ込んで早くからやって来おったんだ」