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あるおんな
或る女
有島 武郎
2(後編)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,655 字 · 406 页
そして、
「光明寺のほうへでも行ってみようかと思ったのだが、川が渡れんで……この橋を行っても行かれますだろう」
三人は橋のほうを振り返った。まっすぐな土堤道が白く山のきわまで続いていた。
「行けますがね、それは浜伝いのほうが趣がありますよ。防風草でも摘みながらいらっしゃい。川も渡れます、御案内しましょう」
といった。葉子は一時も早く木部からのがれたくもあったが、同時にしんみりと一別以来の事などを語り合ってみたい気もした。いつか汽車の中であってこれが最後の対面だろうと思った、あの時からすると木部はずっとさばけた男らしくなっていた。その服装がいかにも生活の不規則なのと窮迫しているのを思わせると、葉子は親身な同情にそそられるのを拒む事ができなかった。
倉地は四五歩先立って、そのあとから葉子と木部とは間を隔てて並びながら、また弁慶蟹のうざうざいる砂道を浜のほうに降りて行った。
「あなたの事はたいていうわさや新聞で知っていましたよ……人間てものはおかしなもんですね。……わたしはあれから落伍者です。何をしてみても成り立った事はありません。妻も子供も里に返してしまって今は一人でここに放浪しています。