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あるおんな
或る女
有島 武郎
2(後編)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,655 字 · 406 页
この冬は米国にいるのだとばかり決めていたので、あんなものを作ってみたんですけれども、我慢にももう着ていられなくなりましたわ。後生。あなたの所に何かふだん着のあいたのでもないでしょうか」
「どうしてあなた。わたしはこれでござんすもの」
と女将は剽軽にも気軽くちゃんと立ち上がって自分の背たけの低さを見せた。そうして立ったままでしばらく考えていたが、踊りで仕込み抜いたような手つきではたと膝の上をたたいて、
「ようございます。わたし一つ倉地さんをびっくらさして上げますわ。わたしの妹分に当たるのに柄といい年格好といい、失礼ながらあなた様とそっくりなのがいますから、それのを取り寄せてみましょう。あなた様は洗い髪でいらっしゃるなり……いかが、わたしがすっかり仕立てて差し上げますわ」
この思い付きは葉子には強い誘惑だった。葉子は一も二もなく勇み立って承知した。
その晩十一時を過ぎたころに、まとめた荷物を人力車四台に積み乗せて、倉地が双鶴館に着いて来た。葉子は女将の入れ知恵でわざと玄関には出迎えなかった。葉子はいたずら者らしくひとり笑いをしながら立て膝をしてみたが、それには自分ながら気がひけたので、右足を左の腿の上に積み乗せるようにしてその足先をとんびにしてすわってみた。