轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あるおんな
或る女
有島 武郎
2(後編)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,655 字 · 406 页
でもこんなに弱っていても手術はできるのかしらん……もう蚊帳をつっておくれ。そしてついでに寝床をもっとそっちに引っぱって行って、月の光が顔にあたるようにしてちょうだいな。戸は寝入ったら引いておくれ。……それからちょっとあなたの手をお貸し。……あなたの手は温かい手ね。この手はいい手だわ」
葉子は人の手というものをこんなになつかしいものに思った事はなかった。力をこめた手でそっと抱いて、いつまでもやさしくそれをなでていたかった。つやもいつか葉子の気分に引き入れられて、鼻をすするまでに涙ぐんでいた。
葉子はやがて打ち開いた障子から蚊帳越しにうっとりと月をながめながら考えていた。葉子の心は月の光で清められたかと見えた。倉地が自分を捨てて逃げ出すために書いた狂言が計らずその筋の嫌疑を受けたのか、それとも恐ろしい売国の罪で金をすら葉子に送れぬようになったのか、それはどうでもよかった。よしんば妾が幾人あってもそれもどうでもよかった。ただすべてがむなしく見える中に倉地だけがただ一人ほんとうに生きた人のように葉子の心に住んでいた。互いを堕落させ合うような愛しかたをした、それも今はなつかしい思い出だった。