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あるおんな
或る女
有島 武郎
2(後編)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 205,655 字 · 406 页
葉子は目に涙をためながら思うままの振る舞いをした。自分でも知らぬ間に、葉子は、岡のそば近くすわって、右手をその肩に、左手を畳に突いて、しげしげと相手の顔を見やる自分を見いだした。
「ごぶさたしていました」
「よくいらしってくださってね」
どっちからいい出すともなく二人の言葉は親しげにからみ合った。葉子は岡の声を聞くと、急に今まで自分から逃げていた力が回復して来たのを感じた。逆境にいる女に対して、どんな男であれ、男の力がどれほど強いものであるかを思い知った。男性の頼もしさがしみじみと胸に逼った。葉子はわれ知らずすがり付くように、岡の肩にかけていた右手をすべらして、膝の上に乗せている岡の右手の甲の上からしっかりと捕えた。岡の手は葉子の触覚に妙に冷たく響いて来た。
「長く長くおあいしませんでしたわね。わたしあなたを幽霊じゃないかと思いましてよ。変な顔つきをしたでしょう。貞世は……あなたけさ病院のほうからいらしったの?」
岡はちょっと返事をためらったようだった。
「いゝえ家から来ました。ですからわたし、きょうの御様子は知りませんが、きのうまでのところではだんだんおよろしいようです。