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あるひ
或る日
宮本 百合子
「愛国婦人」1925(大正14)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,119 字 · 21 页
「旦那様の御加減はいかがでございますかと仰云ってでございます。そして、若しおよろしいようなら、今日は折角でございますから奥様だけでも是非おいで下さいますように。一年にたった一度のクリスマスで――」
「一年にたった一度のクリスマス!」その一句は、異様に彼の神経を刺戟した。まるで、その一度きりの日にさえ、妻の外出を止めるお前は良人なのかと云う詰問が含まれてでもいるようではないか。依岡の女中が一年にたった一度のクリスマスなんかと云うものか、この婆さん!
彼は、真白い、二つ積ねの枕の上に仰向いたまま云った。
「一年に一度でも二度でも今日は上れませんと云え。奥さんだって行く気はないんだ」
扉の把手を握ったまま、れんはあわてて二三度腰をかがめた。
「はい。はいはい」
扉をしめながら、彼女は更に一つをつけ加えた。
「はい。――」
彼は天井を見ながら我知らず苦笑を洩した。が、その笑が消え切らないうちに、彼の胸には、妙な鬱憤がくすぶって来た。
彼は眉を顰めながら、敷布の間で体の位置をかえた。枕の工合をなおした。
彼にはれんがちゃんと断って来た報告をしないのが気に触った。其上いつもなら枕元に椅子を引きよせて、五月蠅いほど何か喋ったり笑ったりする彼女―― Chatterbox が、自分の部屋に引こんだきりことりともさせないのは穏やか