轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あるそびょう
或る素描
豊島 与志雄
「新潮」1925(大正14)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,802 字 · 24 页
その時彼は平然として答えたのだった。
「別に悪意あってしたわけではありません。彼女の不思議な能力に対する感謝のしるしです。私がいくら練習しても、心を練っても、到底会得出来ない能力を彼女が持ってるからです。」
その能力というのは、透視……というほどではないが、一種の精神感応力だった。盆の上に茶碗を幾つも伏せておいて、どれかの中に貨幣を入れておくと、彼女は上からじっと眺めながら、それをよく云い当てた。教師連中は面白がって、当ったら中の貨幣をやることにして、度々彼女に試みさした。外れることも時にはあったが、大抵は美事に当った。
それを最も不思議がって、彼女に最もしつっこく試みさしたのは、長谷部だった。しまいには、ありったけの五十銭銀貨を持ち出したり、また自分で試みてみたりした。彼女も遂には嫌がって、なかなか求めに応じなくなった。然し長谷部は一人で熱中していった。透視や千里眼なんかに関する書物は勿論のこと、心霊研究の方面の書物までも買ってきて、夜遅くまで読み耽った。
そういう彼の熱心さを、教務主任と学生監とは信じなかったし、また彼の方でも誇示しようとしなかった。