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あるせんきょふうけい
或る選挙風景
「新潮 第四八巻第七号」1951(昭和26)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,997 字 · 14 页
たべすぎてゲロをはく。しかし日本の彼はゲロを吐かないかも知れない。胃袋の健康さだけはサムライ風らしいや。
私もついに投票に行ったね。私が投票にでかけるなどとは、私自身考えてもいなかった。すくなくとも三四日前までは。私も結局、絶え間なき騒音に屈服したらしい。しかし、私は、一人の男を、かの六十何歳かの武芸者然たる存在を、どうしても当選させたくないというヤケクソな気持に襲われ、そのヤケな思いをさらにヤケ的に満足させるためにシガない一票を用いたようだ。
彼と争っていた人物は民主党の候補者だった。私は民主党という政党が共産党の次にキライである。否、彼らが再軍備を主張しはじめてから、共産党と同じぐらいキライであった。しかし、この際はもはや政党の問題ではなかったのである。
かのトラックの最後尾に腰かけてジッと正眼に見つめている存在は、自由党の候補で、この町のボスであった。私はボスというものがキライだね。金力とボスの力に物云わせて票をかきあつめようというだけで、政策や識見は殆どないようだ。もっとも田舎の小ボスぐらいに目くじらたてる必要もなかろうから、私は元々投票には行かないつもりにしていたのさ。