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あるむらのいつつのはなし
或る部落の五つの話
佐左木 俊郎
「文学時代」1929(昭和4)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,917 字 · 12 页
「決してそうでは御座いません。自分の財産を投げ出しても、病人を救うのが医者の任務と心得まして、利得を計ったことは御座いません。」
「然らば被告はいかなる考えで人命を断ったか? 竹駒稲荷の效験顕然なことを知らせようとしてのことか?」
「…………」
「竹駒稲荷の效験顕然なる事を知らせることは、間接にもしろ、被告自身の利得を計っているではないか? 第一予審調書に依れば、被告は相当な御礼寄進をなさざれば、直ちにお使いの白狐が飛び出して田畑を荒らし、その他再び病気を発するなど、顕然なる罰を受けるものと称して、金銭、米穀、反物、田畑、山林などを寄進せしめ、これを私有し、贅沢なる暮らしをしていたではないか?」
「…………」
「即ち、被告は、神の名により、不当の価格にて医薬を売ろうとしたものであり、人命救助の目的を以って竹駒稲荷の祠を建立したものではない。藤原平三に、重クロム酸加里を混入せる酒を呑ましめたることも、自分の利得のための殺人として情状酌量の余地なし。」
――昭和四年(一九二九年)『文学時代』十月号――