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せんじょう
戦場
夢野 久作
「改造」改造社、1936(昭和11)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,769 字 · 51 页
かねてから打合わせて在ったと見えて一小隊、約百名ばかりの腮紐をかけた兵卒が負傷兵に正面して一列に並んだ。並ぶと同時に銃を構えてガチャガチャと装填しはじめた。
その列の後方から小隊長と見える一人の青年士官が、長靴と、長剣の鎖を得意気に鳴らして走り出て来た。軍医大佐の前に来て停止すると同時に物々しく反り返って、軍刀をギラリと引抜いて敬礼した。
折からヴェルダンの中空に辷り昇った強力な照明弾が、向い合った味方同志の兵士の行列を、あく迄も青々と、透きとおる程悽惨に照し出した。
その背後の死骸の山と一緒に……。
四
若い小隊長は白刃を捧げたまま切口上を並べた。
「フランケン・スタイン工兵聯隊、第十一中隊、第二小隊カアル・ケンメリヒ中尉……」
「イヤ。御苦労です」
軍医大佐は巨大な毛皮の手袋を穿めた右手を挙げて礼を返した。その右手で、左から右へ水平に、残忍な……極度に冷静な一直線を指し描いた。
「この犬奴らを片付けて下さい」
「……ハッ……ケンメリヒ中尉は、この非国民の負傷兵等をカイゼルの聖名によって、今、直ぐに銃殺させます」
後方勤務でウズウズしていた若い、忠誠なケンメリヒ中尉は、この使命を勇躍して待っていたらしい。