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てふうきん

手風琴

小川 未明

「民政」1933(昭和8)年9月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,957 字 · 6 页

青空文庫

」

じいさんがきくと、男は、いろいろ自分の持っている薬について話したのです。

「私が、命がけで山に登って採った草の根や木の実で造ったもので、いいかげんなまやかしものではありません。一本のにんじんをとりますのにも、綱にぶらさがって、命をかけています。またこのくまのいは、自分が冬猟に出て打ったもので、けっして、ほかから受けてきたものでありません。だから、この薬を飲んできかないことはない。私は、うそをいったり、偽ったりすることができぬ性分です。病気になって苦しんでいる人たちに、わかりもしないめったのものをやれましょうか。いまは、人をだましても悪いと思わなければ、飲んでその薬がきかなくて死んでも、毒にさえならなければかまわぬといった世の中です。私の親父も薬取りでした。そして、命がけで取って薬を売って歩いて、一生を貧乏で送りました。私も子供の時分から山々へ上がって、どこのがけにはなにがはえているとか、またどこの谷にはなんの草が、いつごろ花を咲いて、実を結ぶかということをよく知っていました。親父は、薬売りは、人の命にかかる商売だから、めったなものを持ち歩くことはできない。