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てふうきん
手風琴
小川 未明
「民政」1933(昭和8)年9月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,957 字 · 6 页
自分で採って造ったものなら安心して売ることができるといっていましたが、私が、また死んだ親父の後継ぎをするようになりました。この手風琴も親父が持って歩いたものです。」
じいさんは、変わっている男だと思いました。町の薬屋へゆけば、このごろどんな薬でも他の町からきている。そして、光ったりっぱな容器の中にはいって、ちゃんと効能書きがついている。田舎だって、もうこうした売薬は、はやらないだろうと思いました。
「こうして、歩きなさって、薬が売れますかい。」と、じいさんは、ききました。
「偽物が安く買われますので、なかなか売れません。薬ばかりは、病気になって飲んでみなければわからないので、すぐに本物とは思ってくれないのです。」
「都にゆくと、たくさん、大きな工場があって、どんな病気にもきく薬をいろいろ造っているという話だが。」
「おじいさんは、そんな薬を信用なさいますかね。」
「さあ、私は、じょうぶで薬を飲んだことがないからわからないが。」
男は、さびしそうな顔をして、もう、まったく暗くなってしまった、暮れ方の空を見上げました。
「おじいさん、この小舎のすみに一晩泊めてくださいますまいか。