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ピッチャーさつじんじけん
投手殺人事件
「講談倶楽部 第二巻第五号」1950(昭和25)年4月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,243 字 · 57 页
と、木介は悲しいことを言っている。
無事、京都へとさしかかる。京都着は午後六時四十一分の予定。
「モク介。煙山の車へ行って、見張ってろよ」
「ヘエ」
しかし木介は京都へ着かないうちに、うかない顔で戻ってきた。
「煙山の姿が、見えないですよ」
「便所か」
「煙山の坐ってた近所の人にきいてみたが、みんな知らないってさ。それから一応、アミダナを見て歩きましたが、あのトランクらしきものは二ツとも無くなってますな。コチトラ、自慢じゃないが、トランクに札束あり、と見破ってこのかたツラツラ目に沁みこませておきましたんで、見忘れないツモリですわ」
京都へつく。
二人は改札口のところにガン張って目を皿にしていたが、煙山は下車してこない。降車客は見えなくなった。
停車時間は十五分もあるから、乗換線のプラットホームをしらべたが、見当らない。念のため、もう一度、車内をテンケンすると、京都で乗客の大入換りがあって、かなり空席も目に立つ中に、いる、いる。
煙山は今度は最前部の二等車のマンナカあたりにマフラーで顔を隠し、オーバーの襟を立てて、雑誌をよんでいる。例のカバンは座席の下へ押しこんで足でおさえている。