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ピッチャーさつじんじけん

投手殺人事件

坂口 安吾

「講談倶楽部 第二巻第五号」1950(昭和25)年4月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,243 字 · 57 页

青空文庫

あいつが加入すれば、優勝疑いなしだよ。さっそく社長に話してみようじゃないか」

敷島社長の部屋を訪れて相談したが、三百万という値はなんとしても高額すぎる。去年のトレードは五十万から八十万が最高と云われ、今年はベストテンの上位選手で百万、一人ぐらいは、百五十万、二百万選手ができるかも知れないと噂されている。球団が十五に増したから、選手争奪が激しく、高値をよんでいるのである。

「いくら三振王だってたかが新人じゃないか。百万も高すぎるぜ」

太ッ腹の敷島だが、こう云うのは、ムリがない。

「しかしですね。あれが加入すれば必ず優勝しますよ。優勝すれば、安いものです。とにかく、大鹿は三百万の金がいる。三百万必要だから動くんですよ。さもなきゃ絶対動かん選手なんだから、相場を度外視して、三百万そろえて下さい」

「じゃア、こうしよう。とにかく、三百万、そろえれば、いいのだろう。大鹿に百万。暁葉子の出演料の前貸しとして二百万。これで当ってみたまえ。暁葉子の二百万も例外だが、いずれ、返る金だから、あきらめるよ」

「そうですか。じゃ、それで当ってみましょう」

そこで煙山は、さッそくその日の夜行で京都へ走った。