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ピッチャーさつじんじけん

投手殺人事件

坂口 安吾

「講談倶楽部 第二巻第五号」1950(昭和25)年4月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,243 字 · 57 页

青空文庫

「ふてえぞ。京都の警察は」

「まア、まア。カンベンしてくれ」

「よせやい。我等こと、捜査のヒントを与えてやろうと天壌無窮の慈善的精神によってフツカヨイだというのに、こういう俗界へ降臨してやったんだぞ。アン、コラ」

「すまん、すまん。フツカヨイの薬をベンショウするから、キゲンをなおしてくれよ。ちょうどお午だ。ベントウをたべてってくれ」

居古井警部は、サントリーウイスキーをとりだして、二人にさした。

「収賄罪にならんかネ」

木介はキゲンをなおして乾杯した。

「ねえ、居古井さん。我等こと、多少の尽力を惜しまなかったんだから、そちらも、ちょッと、もらしてくれまへんどすか、ほかの新聞にもらさんことをネ」

「それは、キミ、もらすも、もらさんも、あるもんか。君らの尾行記は、うけるぜ」

「おだてなさんな」

「ときに昨日の朝の七時三十分だったネ。君らが煙山さんの姿を最初見つけたとき、彼の服装はどうだった」

「今日のと同じさ。シャッポとマフラーが違うだけだ」

「マスクは?」

「そのときは、かけてなかったネ。マスクかけて、マフラーにうずまッてたんじゃ、見分けがつかねえや。コチトラ、二度見かけただけの顔だから」