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おしえのきせき

押絵の奇蹟

夢野 久作

「新青年」1929(昭和4)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,749 字 · 114 页

青空文庫

私は不義を致しましたおぼえは……」

「何ッ……何ッ……」

「不義を致しましたおぼえは毛頭御座いませぬが……この上のお宮仕えはいたしかねます」

「……………」

「お名残り惜しうは御座いますが、あなたのお手にかかりまして……」

「何ッ……何じゃと……」

と云いつつお父様はグイグイと私を、おゆすぶりになりました。

お母様はハフリ落つる涙を鼻紙でお押えになりました。

「ただ、そのトシ子だけは、おゆるし下さいますように……。それは正しくあなた様の……」

「何をッ……又してもぬけぬけと……」

「イイえ……こればっかりは正しく……」

「エエッ……まだ云うかッ……」

「イエ……こればかりは……」

「黙れッ……ならぬッ」

とお父様が仰有る途端に私を、お突き放しになりましたので、私はバッタリと倒れて、お琴の上にひれ伏しました。それと一緒に琴柱が二つか三つたおれてパチンパチンと烈しい音がしたように思います。

私はこれから先の事を書くに忍びませぬ。

けれどもこれから先の事を書きませぬと、何もかも疑問のままになると思いますから、記憶えております通りに記し止めさして頂きます。

私がようやっと、お琴の上から起き直りました時には、畳の上に正座して、両手を膝の上に置いたまま、うなだれておいでになるお母様と、それに向い合って、突立っておいでになるお父様のお姿が