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しんどうま
振動魔
海野 十三
「新青年」博文館、1931(昭和6)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,354 字 · 34 页
彼は、或る時は図書館に立て籠って、沢山の書籍の中をあさり、また或る時はそれとなく医学者の講演会や、座談の席上に聞き耳をたてて、その方法を模索したのだった。夫人を美酒に酔わせるか、鴉片をつめた水管の味に正体を失わせるか、それとも夫人の安心をかちえたエクスタシーの直後の陶酔境に乗じて、堕胎手術を加えようか、などと考えたけれど夫人はいつも神経過敏で、容易に前後不覚に陥らなかったので、手術を加えても、その途中の疼痛は、それと忽ち気がつくことだろうと予測された。一度夫人に、手術を加えたことを嗅ぎつけられたが最後、すべては地獄へ急行するにきまっていることだった。なんとかして、雪子夫人が、全く気のつかないうちに、それは手術であるとも、彼の持った毒物であるとも感付かないように、極めて自然にことをはこばなければならないのだった。それは、いかに叡智にたけた彼にとっても、容易なことで解決できる謎ではなかった。
だが幸運なる彼は、とうとう非常にうまい方法を知ることができた。
それは、物体の振動を利用する方法だった。いまドロップスの入っていた空き缶の蓋を払いのけて底に小さな孔をあけ、そこに糸をさし入れて缶を逆さに釣り、鉛筆の軸かなにかでコーンと一つ叩いてみるがいい。