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しんどうま
振動魔
海野 十三
「新青年」博文館、1931(昭和6)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,354 字 · 34 页
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僕はこれから先ず、友人柿丘秋郎が企てた世にも奇怪きわまる実験について述べようと思う。
柿丘秋郎と云ったのでは、読者は一向興味を覚えないだろうと思うが、これは無論、僕が仮りにつけた変名であって、もしもその本名を此処に真正直に書きたてるならば、それが余りにも有名な人物なので、読者は吁ッと驚いてしまうだろう。それにも拘らず、敢えてジャーナリズムに背き、彼の本名を曝露しない理由は――と書きかけたものの、僕は内心それに言及することに多大の躊躇を感じていることを告白せねばならない――彼の本名を曝露しない其の理由は、彼の妻君である柿丘呉子を、此後に於ても出来得るかぎり苦しめたくないからなのである。呉子さんは野獣的な今の世に、まことに珍らしいデリケートな女性である。それをちょっと比喩えてみるなれば、柔い黄色の羽根がやっと生えそろったばかりのカナリヤの雛仔を、ソッと吾が掌のうちに握ったような気持、とでも云ったなら、仄かに呉子さんから受ける感じを伝えることができるように思われる。庭の桐の木の葉崩れから、カサコソと捲きおこる秋風が呉子さんの襟脚にナヨナヨと生え並ぶ生毛を吹き倒しても、また釣瓶落ちに墜ちるという熟柿のように真赤な夕陽が長い睫をもった円らな彼女の双の眼を射当てても、呉子さんの姿は、たちどころに一抹の