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しんどうま

振動魔

海野 十三

「新青年」博文館、1931(昭和6)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,354 字 · 34 页

青空文庫

「……」

「あなたの祈りは、とうとう聞きいれられたのよ。あたしたちの可愛いい坊やは――ホラあなたにも会わせたげるわ」

ピシャリと、柿丘の頬に、生まぬるいものが当ると、耳のうしろを掠めて、手帛らしい一掴ほどのものがパッと飜って落ちた。

「吁ッ――」と声をあげて、柿丘は頬っぺたを平手で拭ったが、反射的に、その生まぬるいものの付着した掌を、グッと顔の前にさしだした。うわッ、血だ、血、血、ぬらぬらとした真紅な血塊だった。

柿丘はその場に崩れるように膝を折って倒れると、意識を失ってしまった。

どの位、時間が経ったのか。彼が再び気がついたときには室内に白石夫人の姿は最早見えなかった。

(兎に角、うまく行った。真逆、なにがなんでも、音響振動で夫人に堕胎をさせたとは、気がつくまい。胎児さえ流れてしまえば、もうこちらのものだ。おい柿丘、お前の勝利だぞ。一つ大きい声で愉快に笑え!)

そう自分の心を激励したものの、声を出そうとしても、胸が抑えつけられるようで、思うようにはならなかった。気がつくと、咽喉の下あたりと思われるあたりに、何か南瓜のようなものが閊えるようで、気持がわるかった。