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しんどうま
振動魔
海野 十三
「新青年」博文館、1931(昭和6)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,354 字 · 34 页
こんな名刺なんか、破いて捨てちまえだと思った。しかしそんなことは色にも出さず僕は云った。
「どんな御用か存じませんが、まアお掛けなさい。一寸着物を着ますから……」
そう云って僕は、着物のある奥座敷の方へ、とび込もうとすると、
「いや、動くと、一発。横ッ腹へ、お見舞い申しますぞ」青年は、おちついて云った。
ふりかえってみると、青年紳士の右手にはキラリと、ブローニングが光っているのだった。
僕は、裸のままで、新調の洋服をソッと傍へのけると、縁側に腰を下ろした。
「もう、お覚悟はついたことでしょうが、柿丘秋郎殺害犯人として、貴方を捕縛します。令状は、ここにちゃんとあります」
帆村と名乗る私立探偵は、白い紙きれを、僕の方に押しやった。
「莫迦なことを云っちゃいかん」
と、僕は云った。
「柿丘は僕の親友でもあり、兄弟同様の仲なんだ。怪しい人物は、彼をめぐる女性たちそれから藪医者なんか、沢山あるじゃないか」
「そんなことは、貴方のお指図をうけません。知りたければ云ったげますが、僕は柿丘夫人から依頼をうけて、もう一と月あまり、あらゆる捜査をやってきたんです。この期に及んで、そうじたばたすることは、貴方の虚名を汚すばっかりですよ。