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たんていのまき
探偵の巻
「都新聞 第一八三四二~一八三四四」1938(昭和13)年11月24~26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,368 字 · 9 页
食堂の親父は珍妙な人物だから、流石に先生は見上げたもんぢや、と益々僕を尊敬するばかり。目出度い話であつたが、まづ聞きたまへ。
娘は養女であつた。食堂の主婦の姉の子だが、主婦なる女人が天下に稀なお天気屋で、朝は娘を甘やかし、夜は娘を打擲するめまぐるしい変転ぶり。娘は養母を軽蔑すること限りもなく、ひとごとながら、先の危なさが思ひやられて頼りない有様で、はじめから娘は家出するやうに出来てゐた。
十二月のことだ。路上で中学生と立話してゐるところを見つかつて、母に叱られ、その夜行方不明になつたのである。
お天気屋だから、さて娘が帰らないとなると、騒ぎが芝居もどきになる。当時食堂の二階は碁会所を開いてゐたから、碁席の番人関さんだとか、元巡査山口さん、祇園乙部見番のおつさん杉本さん等々、額を集めて町内会議がひらかれる。この元巡査がアルコール中毒で、頼りにならないこと夥しく、会議は専ら猥談の方へ進行するばかり、とても埒があかないのである。然らば先生に頼めといふので、親爺の奴山のやうな捜査資料を僕のところへ担ぎこんだ。流石大磐石の先生も目を廻しさうな、大変な手紙の山だ。