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たんていしょうせつをきる

探偵小説を截る

坂口 安吾

「黒猫 第二巻第九号」1948(昭和23)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,819 字 · 6 页

青空文庫

まったく、こゝまで超人的明察となると、これは低脳と云わざるを得ない。作者の頭の悪るさの証拠である。つまり、智能の限界を知らないのである。

これに配するボンクラ刑事は、マーカムという検事、ヒューズ警部、御ていねいに二人まで登場して、読者には判りきったマヌケぶりを、くりかえし、くりかえす。このバカ問答がヴァン・ダインの探偵小説のほゞ三分の二を占めている。

この低脳ぶり、無能無策の頭の悪さに立腹するどころか、これぞ探偵小説の本道などゝズイキしてお手本にしているのが小栗虫太郎はじめ日本の探偵小説家であるから、みんな三分の二はムダなことを得々と書いていられる。

私が先般、探偵小説の型に合わない、形式も知らずに探偵小説を書くとは怪しからん、という投書があったが、いかに日本人というものが猿智恵で、与えられたものを鵜のみにするしか能がないか、この投書のみならず在来の探偵小説がそれを証明しており、洋学移入可能の智能原始状態は探偵小説をもって第一人者となす。ヴァン・ダインだ、クイーン、カー、クリスチーだ、クロフツだ、フィルポッツだ、シメノンだ、といって、いったい芸術の独創性というものは、どこへ忘れているのやら。