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たんていしょうせつをきる
探偵小説を截る
「黒猫 第二巻第九号」1948(昭和23)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,819 字 · 6 页
まだしも、他の芸ごと、たとえば、他の文学とか、音楽、絵画には、それぞれ、個性とか独創を尊び、形式やマンネリズムを打破することに主点がおかれているものだ。探偵小説ときてはアベコベで、先人の型に似せることを第一義としている。お手本がなければ、どうにもならず、お手本のクダラナサを疑ることなど毛筋ほどもないのである。
私は本格探偵小説が知識人にうけいれられぬ原因の最大のものは、その形式のマンネリズムにあると信ずる。つまり一方にマカ不思議な超人的迷探偵が思い入れよろしく低脳ぶりを発揮し、一方にそれと対してあまりにもナンセンスなバカ探偵が現れて、わかりきったクダラヌ問答をくりかえす。とても読めるものじゃない。
ガボリオーの創始した型を三人四人模倣したら、たいがい作者も読者もウンザリしそうなものだが、それから何十年、洋の東西を問わず何千何万の探偵小説家がみんな同じ型をふむばかりか、それだけが探偵小説の本道だという思いこみ方で、他の芸ごとに比して、探偵小説がいかに幼稚な、無知性的な状態に安住しているかということがわかる。
描写や表現の形式に於て、かくの如くに幼稚であるということは、要するにトリックに於ても幼稚であることを意味している。