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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
「新聞見てでありましょう? ほん、よろしうありましたのう。おめでとうございます」
「よかったわねえ。みんなのために、本当によかったわ、ありがとう」
つや子はもうはだしではなく、下駄をはいて、やつれながらもいくらか安堵した様子であった。
「おばあちゃん、切符何とかせにゃいけますまい」
「それ、それ。一寸駅へいって来よう」
母は、駅長にあって、重吉が解放される事情を話し、特別許可で八日にはじめて開通する呉線まわりの列車の切符を一枚とってくれた。万一の場合を考えて、ひろ子はその切符を、青森までのに頼んだ。七日が呉進駐で、列車の運転は禁止されているのであった。
「仕様がない。まあ、あした一日お待ちませ」
登代は、満足そうに微笑んだ。
「駅長はんも、永年御苦労様なことじゃあったとお祝い云うてでありましたよ」
重吉という名が、母にとってよろこびをもたらすものでなくなってから、幾何かの歳月がすぎたろう。世間の沢山の人同様、母は恐ろしい虚偽の報道に辱しめ苦しめられ、正義のない正義の法律によっておびやかされつづけて来たのであった。
「ほん、お父はんをきょうまで生かしておきたかったのう」