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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
ひろ子は、これまでの平坦ならざる長い月日の間に、一度ならずそれを痛感した。
例えば七年前、ひろ子はプロレタリア文学運動に参加したという理由で、起訴された。三年の懲役、五年の執行猶予が言い渡された。そのとき、ひろ子は文学にある階級性を最後まで主張しきれなかった。重吉は、自分の公判準備のとき、ひろ子に関する書類をすっかり読んだ。そして不自由な手紙の中で、数通に亙ってその批評をした。ひろ子が、どの点では譲歩しすぎている、どの点では、健気に理性を防衛しようと努力している、と。そのとき、ひろ子は学んだ。ひろ子にとって最小限だったそれらの譲歩は、重吉としてみれば、妻としてのひろ子に寛容し得る最も大きい限度に近いものであったのだ、ということを。
ひろ子に対する重吉の寛容、堪忍づよさは、ひろ子なしではやってゆけない重吉だからそうなのではなかった。全くその反対であった。重吉はひろ子なしでもやってゆけるが、ひろ子のまともな生きかたにとって重吉は不可欠である。それを重吉が知りつくしているからのことである。そして、ひろ子との関係をそのように血肉のものとして理解しているのは、重吉の愛によるのであった。