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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
その中を、昼間の若い者が支店長宅からと云って迎えに来た。
「おさしつかえなかったら、今晩はお泊りやすようにということであります」
ともかく、と云って伴れが出て行ってしばらくすると、停電になった。真暗闇で坐っている耳に、裏の篠笹山をそよがして横なぐりの豪雨が降りかかるのがきこえ、はげしくガラス戸が鳴った。部屋の中に雨洩りがはじまった。畳におちる滴の重い柔かい音がする。ややしばらくして、階段をのぼって来る影法師を大きくうしろの壁に写しながら、かみさんが燈明皿をもって来た。そして、どの部屋へもいくらか間接の明りが行くように、廊下の本箱の上にそれをおいた。ひろ子の部屋の雨もりに、大盥がもちこまれた。
ひろ子は、また昨夜の女客の室へ入れてもらった。同じ布団の中で自分の鼻に馴れない化粧料の匂いを感じながらうとうとしかけると、この天井からも雨がもりはじめた。
「まあ、どないしましょう! 眠られしやへんわ」
「大丈夫よ。この雨では、伴れの方、帰らないでしょうから自分のところへ行きますから。そっち側へずっとよって、布団の端を折ればおねられになりますよ」
「そうどっしゃろか」