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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
土埃は雨に洗い流され、影はくっきりと濃く、かたい道路の上にある。
ひろ子は、女学生靴をはいた自分の歩幅のぎりぎりで歩いた。
「奥さん、その荷車のうしろへつらまって歩く方がいいですよ。――はなすと、ズッとおくれてしまいますぜ」
明石が近くなると思うにつれ、従って彼の家が間近くなるにつれ、支店長は熱心にひろ子を督励した。荷物をのせた一かたまりの人々が、その一台の荷車のぐるりを囲んで歩いた。そういう群が、前にもうしろにも、やって来る。あっちからこちらへ来る通行人は益々殖え、そこにも、ひろ子のように荷車を中心とするかたまりが歩いているのである。
「日に、よっぽどの稼ぎだろうなあ、この塩梅だと」
鉢巻をした荷車ひきは、格別汗もかかず、ゆるい下りで足早になりながら、用心ぶかく、
「さあな」
と云った。
「なんせ、こんだけの人数が歩くんだからね……」
体力に合わせては速く、大股に日向を歩きすぎて、ひろ子は胸が苦しくなって来た。もうついて歩けないと思ったとき、荷車ひきは、街道ばたへよって行って、そこへ梶をおろした。幾台もの荷車がとまって、人がたかり、荷の上げおろしをしていた。