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ばんしゅうへいや

播州平野

宮本 百合子

「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页

青空文庫

人々は、すっかりそれで安堵しているのであった。

姫路を出てから、一日じゅうトラックをよじのぼり、這い下り、荷車にすがっていそいで歩いたひろ子は子供のように疲れた両脚をぶら下げて、荷馬車にゆられて行った。

国道の両側に、すき透るような秋の西日に照らされてのびやかな播州平野がひろがっていた。遠く西に六甲あたりかと思われる山並が浮んでいる。空に軽い白雲が綺麗に漂っていて、荷馬車にゆられながらそれを眺めているひろ子の心をしずめた。

こういう秋の午後、思いもかけない播州平野の国道を、荷馬車にのって、かたりことりと東へ向って道中する。重吉に向って、進んでゆく。ひろ子には、その時代おくれののろささえ快適に感じられた。ひろ子が住みなれている関東平野、東北本線で見なれている那須野あたりの原野とちがって、播州の平野には、独特の抑揚があった。一面耕されているし、耕されている畑土は柔かく軽そうで、それは遠望する阪神の山々の嶺が、高く鋭いのにかかわらず、どこか軽々と夕空に聳えている、その風光と調和している。ところどころにキラリと閃く浅い湖のような水面もある。

その荷馬車に荷物だけのせて、自分たちは国道を歩いて来る二人の若者があった。