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ばんしゅうへいや

播州平野

宮本 百合子

「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页

青空文庫

そのねりかたがかたい、軟かすぎると、ひろ子がついて間もなくから昭夫はあたけた。

「いらん!」

ガチャッと何かがころがる音がした。

「昭ちゃん!」

思わず怒ったつや子の声になった。

「どうして、お前、そう云うことをきかんの?」

お父ちゃんに云いつけますよ、とおきまりに結んで来たとしか思えない言葉じりを、つや子はそのまま途切れさせた。溜息でもついている風であった。やがて、気力も張りもない、すてたような調子で、

「母さんはもうしらん」

つまらなそうに歩いてどこかへゆく跫音がした。そのまま台所はひっそりした。あとには昭夫が一人で、すきなだけ板じきをちらかして、はったい粉をたべているのだろう。

上目づかいの癖がある小さい昭夫は、食事のときも、

「くわん」

そう云ったきり、一旦とりあげた箸を粗暴に食卓の上に投げ出した。

「どうで! 昼もようたべんと」

登代が気づかって、顔色のよくない、きょときょとした昭夫を見た。

「治郎ちゃんを見い。ようたべちょる。さあ兄ちゃんじゃけ、昭夫もお行儀ようにせにゃ、東京のおばちゃんが、もうお土産もって来てやらんといの」

昭夫は、ひろ子を見あげて、にやっと笑った。