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ばんしゅうへいや

播州平野

宮本 百合子

「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页

青空文庫

今度来て、ひろ子はそのことに気づいた。これまでもつや子は、おばあちゃん、又、おばあちゃんと、一日じゅう細かになかなかよく母を動かした。ひろ子は、冗談めかして、つやちゃんは甘ったれてよく働かせるのね、と云ったことがあった。まだ若いから、何いうてもたよりないのでありましょう。登代は気をよく説明していた。その頃の呼びかたは、同じおばあちゃんにしても、ちゃんというところに小猫のからむような甘みがあり、母の気質にとっては、そういう絡まりも快よいのであろうと思ってきいた。

おばあちゃんという、軟い名をこわく呼んでいるいまのつや子も、呼ばれる母の身も、ひろ子にとっては気の毒にたえなかった。

昔、ひろ子が駒沢の方に住んでいたとき、低い竹の四つ目垣越しに隣家の菜園があって、その奥に住居の縁側が見えた。一人のおじいさんがそこに住んでいた。嫁に当るひとが、おじいちゃん何々ですよ。おじいちゃん、こうですよと、日に幾度となく呼んだ。その声は、明るい午後ひろ子が机に向っている反対側の室まで手にとるようにきこえて来た。その時分ひろ子は石榴の樹と、子供の土俵あとのある庭に向って小説を書いていた。