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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

それを知らないで、ふざけた真似をした上に、あたしをこんな酷い眼に遭せやがった。ヘン、玄関に刑事さんが待っているとは気がつかなかったろう。いゝ気味だ。さあ旦那、こんな奴は早く引っ縛って連れて行っておくんなさい」

「真昼間から夫婦喧嘩は恐れ入るね」

根岸刑事はニヤ/\とした。

「夫婦喧嘩じゃありません。この野郎が支倉の奥さんに――」

お篠が喚き立てようとするのを浅田は押えた。

「根岸さん、私に何か御用ですか」

「えゝ、鳥渡聞きたい事があるので、署まで来て貰いたいんですよ」

「そうですか、じゃ直ぐ参りましょう」

墓を発く

牛込神楽坂署の密室で、庄司署長を始めとして、大島司法主任、根岸、石子両刑事の四人が互に緊張した顔をして何事か協議していた。

「すると何だね」

大島司法主任は石子に向って云った。

「その大崎の池田ヶ原の古井戸の中から上った死体が、支倉の家にもと女中をしていて三年前に行方不明になった小林貞と云う女ではないかと云うのだね」

「そうです」

石子刑事は答えた。

「その死体は死後六ヵ月を経過していたと云うのですが、そうすると死んだ時が恰度その女が行方不明になった時に一致するのです。