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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页
大正六年十一月十日
死後六ヵ月を経て井戸から出た死体を、三年間土中に埋没した後掘り出して、色も褪せボロボロになって原形を止めない着衣の一部の切れ地から、立派に元の状態が推測出来る科学の力は驚く外はない。而もその服装が小林貞子の家出当時の服装とピタリと一致しているのだ。因縁と云うものゝ恐ろしい事は、貞子が普通ありふれた服装をしていたのなら、又見極める事もむずかしかったであろうが、彼女は田辺校長の鑑定で分る通り、誠に特異な帯を締めていたので、僅に残った帯地が彼女を確認する手段となった。
之も支倉の運の尽きる所であろう。
彼女が特異な帯を締めていたと云う事は、死体の上った節、検視した品川署の警部が、三年後の今樺太は真岡支庁に転任していたが、東京地方裁判所の委嘱により、同地方の判事が取調べたが、彼はこう云っている。
「帯は普通の女帯では勿論なく、又細紐でもなく、若干巾広の女の用うる細帯でした。何分時が経つので、すっかり忘れて終いましたが、帯が普通の女帯でなかった事だけははっきり覚えています」
友長医学士の鑑定書は越えて十二月十九日に到達した。例により結論だけを挙げる。