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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

「もう、お聞きでしたか。お恥かしい次第です」

小林氏の話によると貞子は支倉の為に暴力をもって辱かしめられたのだった。そして忌まわしい病気を感染された為に働く事が出来なくなり、暇を貰って知合の家から病院通いをしなければならなかったのだった。流石の石子も只あきれて聞く許りだった。

「三年前の一月末でした。夜遅く貞を預けてあった知り合の家から使がありまして、貞はこっちへ来てないかと云うのです。だん/\わけを聞きますと、朝いつもの通り病院へ行くと云って出たきり帰って来ないので、病院初め心当りは皆訪ねたけれども、どこへも立寄った形跡がないと云うのです」

それから小林氏の方でも手を分けて、訪ね廻ったが、一向手懸りがない。無論置手紙もないし、はがき一本寄越して来ない。警察へも捜索願を出したが、杳として消息がないのだった。

「死んだものと諦めているのです」

小林氏は眼を瞬きながら、

「子供心にも恥しいとでも思いましたか、投身でもしたのでしょう」

「そのお知合と云うのはどう云う関係なんですか」

「貞を支倉へ世話をして呉れた人でしてね。貞が治るまでの費用は支倉の方で出すと云う事になっていたので、中に這入って貞を預かって呉れたのでした」