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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

「応援を五、六人連れて直ぐ逮捕して来給え」

「さあ」

根岸刑事は落凹んだ眼をギロ/\させながら云った。

「余り騒がん方が好いじゃないですかなあ。鳥は威かさない方が好いですからなあ」

「そんな悠長な事が云ってられるものか」

司法主任は少し機嫌を損じた。

「愚図々々していると又逃げて終うよ」

「そうです」

石子は勢いよく云った。

「運んだ荷物は中々少くないのですから、当分潜伏する積りと見て好いでしょう。大丈夫いますよ。一時も早く捕えたいものです」

「うん、それも宜かろう」

根岸は皮肉な苦笑を浮かべながら、

「然しね、君、自然に逃げた鳥は又巣に戻って来るが、威かした鳥はもう帰って来ないよ」

「謎みたいな事を云うね」

石子は根岸の皮肉な笑に報いるべくニヤリとした。

「謎じゃないさ。僕はどうもその高山と云う家へ踏込む事は賛成出来ないのだ」

「どうして?」

「支倉にしては手際が悪いからね」

「何だって」

石子は聞咎めた。

「そうすると詰り君は、支倉は僕達に潜伏場所を突留められる程ヘマではない。云い変えれば僕達には本当の潜伏場所などは突留められないと云うのだね」

「そう曲解して貰っては困る」