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ほうろう
放浪
織田 作之助
「文學界 第七年第五号」文藝春秋、1940(昭和15)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,399 字 · 47 页
夜が更けると、もう冬近い風が身に沁みて、鼻が痛んだ。暖いところを求めて難波の駅から地下鉄の方へ降りて行き、南海高島屋地階の鉄扉の前にうずくまっていたが、やがてごろりと横になり、いつのまにか寝込んでしまった。
朝、生国魂神社の鳥居のかげで暫く突っ立っていたが、やがて足は田蓑橋の阪大病院へ向った。当てもなく生国魂まで行ったために空腹は一層はげしく、一里の道は遠かった。途々、なぜ丸亀へ無心に行かなかったのかと思案したが、理由は納得出来なかった。病院へ訪ねて行くと、浜子はこんどは眼に泪さえ泛べて、声も震えた。薄給から金をしぼりとられて行くことへの悲しさと怒りからであったが、しかし、そうと許り云い切れないほど、順平は見窄らしい恰好をしていた。云うも甲斐ない意見だったが、やはり、私に頼らんとやって行く甲斐性を出してくれへんのかとくどくど意見し、七円めぐんでくれた。懐からバットの箱を出し、その中に金をいれて、しまいこみながら、涙を出し、また、にこにこと笑った。浜子と別れると、あまい気持があとに残り、もっともっと意見してほしい気持だった。玉江橋の近くの飯屋へはいって、牛丼を注文した。