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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页

青空文庫

そして、その傘の片隅には、シャツを着たお父さんがしょんぼり煙草をふかしていた。

「入れ違いじゃったそうなのう……。」もう二人共涙である。

「いつ来た! 御飯たべた! お母さんは……」

矢つぎ早やの私の言葉に、父は、昨夜×××と間違えられながらやっと来たら入れ違いだった事や、帰えれないので、学生さんと話しあかした事なぞ物語った。

私はお父さんに、二升の米と、半分になった朝日と、うどんの袋を持たせると、汗ばんでしっとりしている拾円札を壱枚出して父にわたした。

「もらってえゝかの?……。」

お父さんは子供のようにわくわくしている。

「お前も一しょに帰えらんかい。」

「番地さえ聞いておけば大丈夫よ、二三日内に又行くから……。」

道を、叫んで行く人の声を聞いていると、私もお父さんも切なかった。

「産婆さんはお出になりませんかッ……どなたか産婆さん御存知ではありませんかッ!」

九月×日

街角の電信柱に、始めて新聞が張り出された。

久し振りに、なつかしいたよりを聞くように、私も多勢の頭の後から、新聞をのぞいた。

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