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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页

青空文庫

二人は人を押しわけて電車へ乗る。

雨が土砂降りだ。いゝ気味だ。もっと降れもっと降れ。花がみんな散ってしまうといゝ。暗い窓に頬をよせて外を見ると、お母さんがしょんぼりと子供のように、フラフラしているのが写っている。

電車の中まで意地悪がそろっているものだ。

九州からの音信なし。

四月×日

雨にあたって、お母さんが風を引いたので一人で店を出しに行く。

本屋には新らしい本がプンプン匂っている買いたいな。

泥濘にて道悪し、道玄坂はアンコを流したような舗道だ。一日休むと、雨の続いた日が困るので、我慢して店を出す。

色のベタベタにじんでいる街路に、私と護謨靴屋さんきりだ。

女達が私の顔を見てクスクス笑って通る。頬紅が沢山ついているのか知ら、それとも髪がおかしいのか知ら、私は女達を睨み返えしてやった。

女ほど同情のないものはない。

ポカポカお天気なのに道が悪い。昼から隣にかもじ屋さん店を出す。湯銭が弐銭上ったとこぼしていた。

昼はうどん二杯たべるの――拾六銭也――

学生が、一人で五ツも買って行ってくれた。今日は早くしまって芝へ仕入れに行って来よう。

帰えり鯛焼きを拾銭買う。