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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页

青空文庫

」

「お父つぁん怒ってた?」

電気の下で見ると、もう四十位の女で、バクレン者らしい崩れた姿をしていた。

「私の方じゃあんなのを梟と云って、色んな男を夜中に連れこんで来るんだが、あんまり有りがたい客じゃないんですよ。お父つぁん油しぼられて、プンプン怒ってますよ。」

人の好さそうな老いたお上さんは、茶を入れながら、あの女をのゝしっていた。

夜うどんをたべる。

明日はこゝの叔父さんの口ぞえで青バスの車庫へ試験うけに行ってみよう……。

電線が鳴っている。

木賃宿街の片隅に、此小さな女は汚れた蒲団に寝ころんで、壁に張ってある、大黒さんの顔を見ながら雲の上の御殿のような空想をする。

国へかえってお嫁さんにでも行こうかしら。――

――放浪記を愛読して下さいます方へ! 私の放浪記が一冊にまとまって、改造社から近刊されます。一人でも沢山の方が読んで下さいましたら、うれしゅうございます。これは筆者からのお願い。――

雷雨

七月×日

胸の凍るような佗しさだ。

夕方、頭の禿げた男の云う事に、「俺はこれから女郎買いに行くのだが、でもお前さんが好きになったよ、どう……。」私は白いエプロンをクシャクシャにまるめて、涙を口にくゝむんだ。