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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页

青空文庫

不安になって来る。廊下に置いたバスケットが妙に厭になった、大事な時間を、借りる! と云う事で、それも正当な権利を主張しているのに、駄目だと云う。

これは、こんなところでみきわめをつけた方がいゝかも知れない。

「じゃ借りません! 其代り止めますから今迄の報酬を戴きます。」

「自分で勝手に止されるのですから、社の方では、知りませんよ。満足に務めて下すっての報酬であって、まだ十二三日しかならないじゃありませんか!」

黄にやけたバスケットをさげて、私は又、二階裏へかえった。

ミシン嬢は、あれから、下の妻君と気持が凍って、引っ越しするつもりでいたらしかったが、帰えって見ると、どこかみつかったらしく、荷物を運び出していた。

彼女の唯一の財産である、ミシンだけが、不格恰な姿で、荷車の上に乗っかっていた。

全てはあゝ空しである――。

七月×日

駅には、山や海の旅行者が、白い服装で、涼し気だった。

下の妻君に五円借りる。

尾道まで七円くらい、やっと財布をはたいて切符を買うと、座席を取ってまず指を折った。

――何度目の帰郷だろうか!

露草の茎

粗壁に乱れる

万里の城

何かうらぶれた感じが深い。