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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页

青空文庫

」

「こんなにせまいのに、あいつまだ助手を置くつもりかしら……。」

二階の物干には、枯れたおしめが半開きの雨戸にバッタンバッタン当って居た。

「こゝは女ばかりですから、遠慮はないんですのよ、私が方々へ出ますから、事務を取って戴けばいゝんです。」

このみすぼらしい××産園の主人にしては美しすぎる女が、私に熱い紅茶をすゝめてくれた。下の女達が、あいつと言ったのが此女なのだろうか、高価な香水の匂いがクンクンして、二階の此四畳半だけは、ぜいたくな道具がそろっていた。

「実はね、下にいる女達、皆素性が悪るくて、子供でも産んでしまえばそれっきり逃げ出しそうなやつばかりなんですよ。だから今日からでも私の留守居して貰いたいんですが、御都合いかゞ?」

あぶらのむちむちした白い柔い手を頬に当てゝ私を見ている此女の瞳には、何かキラキラした冷たさがあった。話はいかにも親しそうにしていて、瞳は遠くの方を見ている。

そのはるかなものを見ている彼女の瞳には空もなければ山も海も、まして人生の旅愁なんて、支那人形の瞳のような、冷々と底知れない野心が光っていた。

「えゝ今日からお手助してもようございますわ。