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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页

青空文庫

」

「帰えっちゃ、やかましいよ。」女中風な女が、一番不快だった。

腹が大きくなると、こんなにもひねくれて動物的になるものか、彼女等の瞳はまるで猿だ。

「困るのは勝手ですよ。」外の暮色に押されて花屋の菜の花の前に来ると、始めて私は大きい息をついた。

あゝ菜の花の古里。

あの女達も、此菜の花の郷愁を知らないのかしら……だが、何年か、見きわめもつかない生活を東京で続けたら、私自身の姿があんな風になるかも知れない。

街の菜の花!

清純な気持ちで、生きたいものだ。何とかどうにか、目標を定めたいものだ。今見て来た女達の、実もフタもないザラザラした人情を感じると、私を捨てゝ去った島の男が呪ろわしくさえ思えて、寒い三月の灯の街に、呆然と私はたちすくむ。

玉葱としょっぺ汁。

共同たんつぼのような悪臭、いったいあの女達は誰を呪っているのかしら――。

三月×日

朝、島の男より為替来る。母さんのハガキ一通。

当にならない僕なんか当にしないで、いゝ縁があったら結婚して下さい、僕の生活は当分、親のすねかじり、自分で自分がわからない、君の事を思うとたまらなくなるが、二人の間は一生ゼツボウ状態だろう――。