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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页

青空文庫

あゝ浮世は辛うごさりまする。

こうして寝ているところは円満な御夫婦、冷い接吻はまっぴらだよ。

お前の体臭は、七年も連れそった女房や、若い女優の匂いでいっぱいだ。

お前はそんな女の情慾を抱いて、お務めに私の首に手を巻いてくる。

どいておくれよッ!

淫売でもした方が、気づかれがなくて、どんなにいゝか知れやしない。

私は飛びおきると男の枕を蹴ってやった。嘘突きメ! 男は炭団のようにコナゴナに崩れていった。

ランマンと花の咲き乱れた四月の空は赤旗だ、地球の外には、颯々として熱風が吹きこぼれて、オーイオーイ見えないよび声が四月の空に弾けている。

飛び出してお出でよッ!

誰も知らないところで働きましょう。茫々として霞の中に私は太い手を見た。真黒い腕を見た。

四月×日

一度はきやすめ二度は嘘

三度のよもやにしかされて……

憎らしい私の煩悩よ、私は女でございました。やっぱり切ない涙にくれまする。

鶏の生胆に

花火が散って夜が来た

東西! 東西!

そろそろ男との大詰が近づいたよ

一刀両断に切りつけた男の腸に

メダカがぴんぴん泳いでいた

臭い臭い夜だよ

誰も居なけりや泥棒にはいりますぞ!