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きゅうこくろん
救国論
中谷 宇吉郎
「西日本新聞」1955(昭和30)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,072 字 · 2 页
現在の日本は、どうひいき目にみても、安定した国の姿ではない。米ソ両陣営の谷間にもがいているというのは、少し極端であるが、その傾きがなくもない。問題は、今の四つの島からの生産では、九千万人に近い人間が生きて行くのに必要な物資が、生産されないという点にある。
その一番わかり易い例が、食糧である。今年は例外であるが、平年では、少なくも一千万石の米に相当する食糧が足りない。その食糧、あるいはそれを輸入する外貨を、外国の援助によって得ているうちは、実質的の独立は出来ない。すべての悩みの根元は、ここにある。
それで何か全部の日本人が、外国の助けを借りないで、腹いっぱいに「白米」が食えるような方法が見つかれば、それが現時における最善の救国論になるわけである。「白米」というのは、われわれ日本人が最も喜ぶ主食という意味である。
政府の方でも、もちろんこの点は充分に考えて、米の一割増産とか、土地改良とか、いろいろな施策を講じておられる。しかしそのほかに、現在考慮を払われていない妙案が一つある。それは日本酒を輸出するという案である。
これには、二つの資料があって、その一つは、米国の米の生産が、近年急激に増して来て、それが日本の一等米、或いはそれ以上の品質になっている、という点である。