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ぶんかさい

文化祭

坂口 安吾

「小説新潮 第八巻第九号」1954(昭和29)年6月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,978 字 · 28 页

青空文庫

彼は目立たない存在として何年かすぎた。

この年、村の青年団が文化祭をやることになった。寄附をつのることになって、幹事数名が帳面をぶらさげて、まず、まっさきに彼のところを訪問した。幹事の中には五助がいた。五助は信二と小学校の机をならべた同級生で、級長であった。口も八丁、手も八丁。青年団のホープなのである。直接信二に会うことができればしめたものだが、たぶん女中がでてきて包み金で追い返されることになろうと胸算用をしていたのである。ところが女中と入れ換って、信二が直々現れた。

信二は土間からつづいている応接間のドアをあけて、

「さア、どうぞ」

「イエ、寄附なんてえものは、立話に限るようで。さっそくですが」

「ま、どうぞ」

「そうですか」

顔や口とはアベコベ、五助は内々しめたとほくそえんで一同とともに応接間に通り、皮張りのバカに大きな肱かけイスに身体をうずめた。

久々にシミジミ見る信二坊っちゃん、不自由はないはずだが、栄養充分の顔色でもない。やや、やせている。深窓に閉じこもっているせいか、なんとなく苦行僧のようなうッとうしいマナザシをしているところが面白い。一見、ノータリンに見えないからである。